こんにちわ、くおりです
今回は食品製造のメインの仕事、製造部について詳しく説明していきます
結論から言ってしまえば「ものを作ること」です
期日に決められた量を決められた品質で作り込むことです
特にQCDSMが大事と言われます
Q:品質(Quality)、C:原価(Cost)、D:納期(Delivery)、S:安全(Safety)、M:士気(Morale)です
最近ではこれにP:生産性(Productivity)とE:環境(Enviroment)も加わって来ています
このPQCDSMEを中心に話をしていきます
製造の役割・定義
製造の役割・定義について食品衛生法での定義とJAS法での定義を確認します
先に結論ですが、食品製造の役割は原料のままではみんなが扱いづらい、食べづらいため、完成品で販売してすぐに食べれるようにします
日持ちさせることで保管しやすく、食べたいときに食べれるようにする
色んな味や食感、色んな形で食べることの楽しみを増やすことです
ズバリ!お客様のニーズを満たせるように食品製造しているんです
改めて定義を確認してみましょう
食品衛生法での定義
- 「製造」:ある物に工作を加えて、その本質を変化させ、別の物を作り出すこと
- 「加工」:ある物に工作を加える点では製造と同様であるが、その物の本質を変えないで形態だけを変化させること
引用元:「食品衛生法の一部を改正する法律等の施行について」(昭和32年9月18日付け発衛第413号の2)
JAS法での定義
- 「製造」:その原料として使用したものとは本質的に異なる新たなものを作り出すこと
- 「加工」:あるものを材料としてその本質は保持させつつ、新しい属性を付加すること
引用元:加工食品品質表示基準Q&A
改めて製造とは、原料である果物や野菜、肉や砂糖、塩、添加物などを加熱や混合することで全く違うものを作り出すこと
例えば・・・
- 肉と玉ねぎと混ぜて、焼くことでハンバーグを作る
- 野菜と果物をすりつぶしてジュースにする
- 小麦粉と砂糖、卵を混ぜて、生クリームと合わせて、フルーツトッピング、ケーキの出来上がり
加工とは、原料である果物や野菜、肉や砂糖としての本質は変わらずに形態の変化、新しい属性を付加すること
例えば・・・
- 肉をすりつぶしてミンチにする
- 果物を乾燥させてドライフルーツにする
- 砂糖を溶かしてシロップにする
といった感じです。
製造すると加工に比べて、色々なものができそうではないですか?
身の回りにあるもの、スーパーなどで棚に並んでいるものって食品製造のものばかりって思いませんか?
製造部の仕事
食品製造の仕事はなんと言ってもものを作ることです
一般の作業員さんの大体の一日の流れはこんな感じ
- 私服で出勤
- 作業着に着替え(上部の写真です)
- 粘着ローラーがけ、手洗い、手の消毒を行って工場へ入場
- ライン作業が始まる前の準備
- 決められた作業場でライン作業(原料準備、仕込み、調合、加熱、成形、詰め工程、包装工程など)
- 作業の合間にトイレ休憩、お昼休憩、トイレ休憩あり
- 作業後に清掃
- 清掃後のチェックと、前日準備
- 工場退出、私服に着替えて帰宅
ラインでの作業者は作る品目で作業の内容ややり方は多少異なりますが、基本的には同じ作業を毎日繰り返します
なので、工場によってはそのラインの責任者は正社員でほかはパートや派遣社員というところも少なくありません
正社員でも最初はライン作業から始まるのが一般的です
ライン作業員→ラインマネージャー(リーダーとか)→工程管理社(サブマネージャー・係長)→工場管理者(マネージャー・課長)→製造部門長(部長)
といった、役職になります
出勤時間・勤務時間は工程にもよりますが、前工程・仕込みなどは一般的に早く、6時や7時などから開始し、詰め工程、包装工程で検品など人が多くいるため、この人達が8時から勤務であればそれに合わせて出勤することになります
閑散期・繁忙期がどの業界もあり、繁忙期は24時間動くときもあれば、閑散期は定時8時間の仕事がないこともあります
イメージとしてはアイスクリームなんかは夏場の商品なので夏が忙しく動き続けていますが、冬はあまり食べないですよね?
工場は暇になるので、アイスクリーム以外のものを作ったり他の工場と連携して人の移動をして雇用を維持したりしなくてはいけません
一つの会社で冬場の商品と夏場の商品と扱っていることがあるのも食品製造業の特徴です
製造する上で大事なPQCDSMEについて
ものを作るということが製造の仕事です
決められた時間で決められた作業をこなすこと
これはもちろん大事です
大事ですが、自分の経験から言うとそこで止まってしまっている人たちが多くいると感じました
言われたこと、決められたことを決められた時間内、たんたんとこなす
本質的に大事な、製造の面白みはPQCDSMEにあると自分は思っています
作業をこなして周りの人たちとお喋りしながら、世間話しながら作業する楽しみも確かにありますが、
これが意識できているかが製造業で成長できる出世できる、楽しみながら仕事できるかの差になると感じています
製造の本質的な目的はお客様のニーズを満たすことです
改めてPQCDSMEの説明です
P:生産性(Productivity)、Q:品質(Quality)、C:原価(Cost)、D:納期(Delivery)、S:安全(Safety)、M:士気(Morale)、E:環境(Enviroment)
大事とは言いますが、率直にいうと製造だけでは出来ません
小さい会社は全体の仕事量も少ないこともあり、製造でやらざる終えないかもしれませんが、一般的にはこれらのことを満たすために他の部門とやり取りしたり、他の会社のサポートも受けながら進めていくことになります
順番に見ていきます
P:生産性(Productivity)
個人的には一番好きですね!!
製造する際になんだかんだいって会社なので利益って大事です
そのため、労働生産性を見ていく必要があります
一時間あたりにどれくらいの製品が出来たのか、利益が出たのか(単位時間あたり労働生産性)
一人あたりにどれくらいの製品が出来たのか、利益が出たのか(単位一人あたり労働生産性)
生産性を上げていくための施策としては以下のことが考えられます
- 設備を導入し、人の作業を代替する、もしくは回転数を上昇させる
- 工程の見直しをして工程の人数を削減する
- 不良を減らして歩留まりを向上させる(QC活動)
- チョコ停など設備の停止時間をなくし稼働時間を増やす(予防保全活動)
何より大事なのは生産性を見えるようにして管理していくことが一番大事です
それぞれの会社で生産性の目標値や指標がない場合は今一度、見直しをしたほうがいいかもしれません
数字が見えるようになるだけでも生産性は上がっちゃうもんです
よく見逃されるのが計画です
営業部門や生産管理部門と協力し、製造時に切り替えなどの手間が発生しない、生産しない時間である清掃や運搬の時間を削減できるようにすることが大事です
Q:品質(Quality)
品質ですが、食品ではかなり大事です
ズバリ、お客様のニーズで商品を手にとったとき、食品であれば食べたときに「美味しい!!」って感じる価値はここに凝縮されます
どんなに安くて、どんなに環境がいいっていっても、人が欲しがる食品で「美味しい!!」っていうものが前提です
美味しいものを作りたくて食品製造で働いている人もいるはず
品質を守っていくには以下のことが大事です
- 現場でルール、マニュアルを作り実施していくこと
- 規格を明確にして、その通りに実施すること
- 作業していく人がお客様のことを考え作業すること
- 不良を減らして歩留まりを向上させる(QC活動)
- チョコ停など設備の停止時間をなくし稼働時間を増やす(予防保全)
- 工程上での検査を確実に行うこと、検査機器をうまく使い担保すること
QC活動や予防保全は生産性でも出てきました
これらは他の項目でも出てくるぐらい重要なことです
また、やると効果が高いのでぜひ、みなさんもトライしてもらいたい
あと、ルールやマニュアルですが最初は大変ですよね
なにもないところから作るのは大変です
なので食品製造においては国際的な団体がグローバルマーケットプログラムなんか出してくれてます
そこから派生してISOやJFSM(Japan Food Safety Management)などが出来ています
無料でマニュアルも出ているので一度見て見るものありかもしれません
この辺は別のタイミングで詳細を説明していきます
これらは品質部門が必須のスキルとなります
製造部門は品質部門と協力して品質の向上に務めることになります
C:原価(Cost)
その作ってる商品の原価っていくらでしょう?
この質問に答えられますか?
おそらく、食品製造に携わる人の大半は答えられないことかと思います
漠然と「もったいない」という意識で不良を眺めている人も多いかもしれません
ただ、利益を出すためには絶対に避けて通れないのがコスト、原価です
多くの企業ではコストは大事という言葉とは裏腹にコストが明確にされていない状態がみられます
一つの製品を作るときに必ず原料がありますよね(原材料費)
製品を作る際に人がかかっているので労務費がかかっています
あと、抜けてしまいがちなのが間接費です
電気やガス、空調、建物の経費、ものを作った人だけではなく管理をする人や間接部門の人件費、運搬費などが該当します
この辺の間接費と経費の境目は会社ごとで決まっています
ただ、経費が曖昧やすべての商品で同じ額が原価で当てられている場合には見直しが必要かもしれません
ひょっとすると一生懸命作った製品が作れば作るほど、売れれば売れるほど赤字になってしまうかもしれないのです
コストを下げる活動としては以下のことが考えられます
- コストの明確化
- 原材料のスケールメリット、代替による原材料費の削減
- 生産性向上による労務費・原材料費の削減、経費率の削減
コストを下げるのにPの生産性が出てきました
こちらもまずは見えるようにすることが大事です
昔からの会社では一部の人が鉛筆なめなめでなんとなく売れば儲かる!みたいなところも見えます
大量にものを売って儲けていた時代はいいんですが、今はものが溢れている時代なので数字による管理が大事です
コストを下げるためには製造での努力も必要ですが、そもそもの企画や品質管理、生産性向上のための関係部署とのやり取りは必須です
あとは購買部門の努力はコストに直結します
原価の計算についてはまた別で説明します
D:納期(Delivery)
ものを作ってもそれをほしいタイミングで提供しなくては意味がありません
夏のとても暑いときに肉まんが大量に届けられても困ります
食品は「旬」「季節」とも大きくリンクします
スーパーなど小売では季節感をだしたお店づくりがされています
その時期にしか売れない商品や商品が納期に間に合わず足りなくなれば、そもそもお客様のニーズに答えれていません
納期を守る・早めるためには以下のことが考えられます
- 運搬ルール、運搬方法の見直し
- 設備故障トラブルを防止するための予防保全
- 生産性向上による製品供給スピードの向上
- 納期の明確化、リードタイムの設定
製造では作ることが仕事ですがものを運ぶ際や最終的にお客様のところへ届けるための運搬、配送の見直しは必須です
大きな工場ではものの移動は機械がやっているところもあります
自動配送者やベルトコンベアでの配送ですね
ドローンなどで運搬するのが当たり前になるかもしれません
生産性向上!またも出てきました!生産性って本当色々なところに絡んでいるんです
よくあるのが設備が壊れてしまってものが作れないパターン
あとは原料が手配できてないなんてのはもってのほかですが、たまにありますね
そもそも納期が明確になっていないや、リードタイム、どれくらいの時間、日数で製品ができあがり、お客様のところへ届けられるのか、はっきりわかっていないこともあります
関係してくる部署は物流の部門や営業部門、生産管理や購買部門ですね
S:安全(Safety)
こちらは経営者に伝えたい、最も大事な労働環境上の安全です
製品の安全は品質に盛り込んでおきましょう
ある程度決まった製品を作る食品製造ですが、多くの現場では人が作業に従事しています
お弁当やお惣菜、スイーツのトッピングなどどうしても人がやらざる負えないところが多々あります
一部ではロボットでの運用も進んでおります
特に形が決まっている菓子業界や逆に形のない飲料業界は自動化やインラインでの製品づくりが出来ています
一方でお弁当やお惣菜など固形物で、しかもやわらかいものや、野菜などの形が不均一なものは人の手が必要です
人と機械が一緒になれば大きな事故も起きてきます
令和2年度の労働災害事故で製造業は休業4日以上の死傷者数が25,333人
その中でも食品製造業は最多で31.0%となっております(引用元:厚生労働省労働災害発生状況)
安全への取り組みについては以下のことが考えられます
- 工程をみて危険箇所を洗い出す
- 設備に安全装置を設置
- ルールやマニュアルを整備して、きちんと守らせる
- 一人ひとりに安全への教育を実施する
どれも当たり前にやれそうですが、人によって育ちが違うように一人ひとり認識が異なります
なのでルールを作りそれを教育すること
製造の中でいちばん大事なのは従業員の安全であることをしつこく教育する必要があります
また、現場で作業していると当たり前になってしまうため、他の部署の人から意見をもらって事前に危険箇所を引き出すヒヤリハットやリスクアセスメントの実施が必要となってきます
一番は経営者が従業員の安全が第一と方針を立て、経費も使えるようになると従業員の意識もかわり、安全が確保された上での生産性向上など考え方も作られていきます
M:士気(Morale)
士気、モラル、モチベーションです
毎日同じことをする製造の現場です
周りの人とお喋りしながらやれる環境もあるかもしれませんが、殆どはライン作業で一人黙々とやることが多いです
仕込みでは原料を持ち上げたり、力勝負の場面もあります
検品の作業では体は一部、手だけ動かしたり、目を常に使ったり体への負荷もかかります
包装や詰めの工程では重たい資材や出来上がった製品を運搬したり、腰への負担もあります
そこでモラルを保つのは製造管理者の最も大きい仕事かもしれません
モラルを保つために必要なことは以下のとおりです
- 面談や普段の声かけによる相互コミュニケーション
- 部署の目標からそれぞれの目標を立てて行動する
- 成長感をもたせてくれる教育
上記のことを実施するには上層部の理解と管理部門の理解が書かせません
目標をたてるには品質管理や生産管理などの部署との数値データも必要です
上司は感情で人を動かすよりも数値やデータを用いて、部下への指導に当たる必要があります
最近流行りのビジネスコーチでは教育ではなく、指導という言葉を使います
教えることが上司の仕事ではなく、寄り添い導いていくような管理者がいるとモラルは向上していきます
E:環境(Enviroment)
製造業では多くの資源を使います
電気やガスなどのエネルギーやそこから生み出される空気や蒸気など
特に食品製造では多くの水や氷を使います
食品で汚染された水はそのまま流せば、周りの環境の汚染になります
エネルギー、資源の使いすぎはそのまま環境破壊に繋がります
SDGsが叫ばれている今日においては環境に取り組むことで企業が得られるメリットも出てきているように思いますが、中小企業では中々切り替えが進んでいないところが多いように思います
環境へのアプローチは以下の通りです
- 運搬などの価値を産まない作業をなくす
- 生産性を上げて、不良を減らし、エネルギーのロスを削減する
- 原材料の調達、企画段階から環境配慮されたものを選定する
E:環境やQ:品質、S:安全はC:原価やD:納期、P:生産性とのバランスが必要になります
環境に配慮した原料を使おうとすると原価が上がってしまう
品質に注意して人をかければ生産性が落ちる
安全作業に従事して時間をかけて、納期を遅らせる
こういった相反するものは改めてですが経営層の方針がなければ実現は難しいです
経営で利益を追求した場合には、目先の利益を優先し後回しにされやすいため、製造部門として必要なことは提案し、経営層に訴えていくことも必要です
まとめ
製造の役割、定義と製造での責任を果たすためのPQCDSMEを説明してきました
P:生産性(Productivity)、Q:品質(Quality)、C:原価(Cost)、D:納期(Delivery)、S:安全(Safety)、M:士気(Morale)、E:環境(Enviroment)
改めて食品製造の役割はお客様のニーズを満たすこと
そのためにPQCDSMEすべてを考えバランス良く実施していくことが不可欠となります
自部署だけでは出来ないことが多いので周りの関連部署への働きかけや提案も必要です
一般スタッフのレベルからモラルを持ち、興味関心を持ち、お客様のニーズであることを認識した上で作られた商品は自然とその価値は高まっていきます
もともとの原料に更に付加価値をつけて、お客様を笑顔にできるのでやりがいある食品製造です
ご意見お待ちしております
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ぜひ、一緒に考え、学び成長していきましょう
特にそれぞれの苦労話や、今悩んでいることがあれば、相談ください!
必ず返答させてもらいます
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